偉大なるアートパトロン、武家から実業家へ
柴山:みなさん、こんにちは。
本日も、先週に引き続き「パトロン」、すなわちアートにお金を出す人についてお話をしたいと思います。
沢辺: はい。
公家や武家などの階級社会がなくなった近現代においては、どのような人々が、アートを支えるパトロンになったのでしょうか?
柴山:はい。
明治になる前後から、商業資本の力が強くなっていきます。それに比例して、実業家や起業家といった方々がパトロンとして台頭し始めました。
沢辺:具体的には、どのような企業や実業家が、パトロンとして有名なのでしょうか?
柴山: そうですね。
まずは、三菱、三井、住友という大財閥が有名ですね。今でも巨大な企業群がありますが、その大元となった人々です。
沢辺:なるほど。
柴山:その他に、大原家があります。
実は、私立の西洋美術館として一番古い美術館は、倉敷にある「大原美術館」です。
現在では、クラレという企業になっていますが、このクラレの前身である倉敷紡績の創業者、その2台目として企業を発展させた大原孫三郎という方が実業家として大成しました。
そしてこの大原孫三郎が、西洋美術をはじめとした美術の巨大なコレクションを通じて、アートパトロンとして台頭しました。
「大原美術館」は、一流の西洋美術のコレクションがありますが、これらの作品を通じて、日本のアートのレベルを高めようという大原孫三郎の意思が継がれています。
沢辺: 西洋美術ということですが、具体的にはどのような作品が含まれているのでしょうか?
柴山:はい。
「大原美術館」は、昭和5年に設立されています。この美術館にコレクションされている作品は、モネやセザンヌ、ルノワール、ゴーギャンといった印象派の画家の作品が多くあります。
こうした1900年頃の名だたるアーティストたちが、まだ現役であり、彼らの作品が現代アートであったころ、大原孫三郎がこれらの作品をコレクションにしました。
沢辺:すごいアーティストたちですね。
なぜこうしたアートコレクションが昭和5年の時点で生まれ得たのでしょうか?
柴山:はい。
大原孫三郎は、自分の財力を基にして、多くの芸術家たちを支援していましたが、その中に、洋画家の児島虎次郎という人物がいました。
孫三郎は、この虎次郎のヨーロッパ留学を資金的にサポートしています。
そして、虎次郎がヨーロッパにおいて様々な現代アートである作品を買うことを資金的に可能にしていたわけです。
そうしたことがあって、今に通じる偉大なコレクションが生まれたわけです。
沢辺:なるほど。
柴山:大原家は、こうした活動を通じて、芸術を後世に長く残そうとしたわけです。
このことは即ち、先週お話ししたように、武家の足利家がアートパトロンとして東山文化を作ったように、大原孫三郎が実業家としてアートパトロンとして名を馳せたということではないかと思います。
沢辺:なるほど。
時代に応じて、アートパトロンも、武家から実業家へということですね。ありがとうございました。
さて、来週はどのようなお話しになりますか?
柴山:はい。
来週は、近現代社会におけるパトロンに続いてですね、現代のアートパトロンの事情についてお話ししたいと思います。
沢辺:Power of Art、来週もお楽しみに!